(目次)
1. はじめに:なぜ今、新PASONAの法則が必要なのか
2. 新PASONAの法則の全体像:旧法則との決定的な違い
3. 各要素の深掘り:心を動かす6つのステップ
3-1. Problem(問題):顧客の痛みに寄り添う 3-2. Affinity(親近感):共感が信頼を醸成する 3-3. Solution(解決策):ベネフィットを具体化する 3-4. Offer(提案):価値と価格のギャップを埋める 3-5. Narrow down(絞り込み):決断の先延ばしを防ぐ 3-6. Action(行動):迷いを断ち切る一歩を促す
4. 実践例(1):B2BコンサルティングサービスのLP構成案
5. 実践例(2):高単価B2Cオンラインスクールの集客レター
6. 実践例(3):D2Cブランドの定期購入を促すステップメール
7. 2026年の消費心理:なぜ「煽り」はもう通用しないのか
8. 成果を最大化するためのライティング・テクニック
9. 結論:新PASONAは顧客と企業の信頼を繋ぐ架け橋である
1. はじめに:なぜ今、新PASONAの法則が必要なのか
マーケティングにおいて、コピーライティングは「24時間365日働く最強の営業マン」です。どれほど優れた商品やサービスを開発し、多額の広告費を投じて集客しても、ランディングページ(LP)やセールスレターの文章が顧客の心に響かなければ、その投資はすべて無駄になります。
数あるコピーライティングの型の中で、日本で最も有名かつ強力なものの一つが「PASONA(パソナ)の法則」です。経営コンサルタントの神田昌典氏によって提唱されたこの法則は、日本人の感性に非常にマッチしており、数多くのヒット商品を生み出してきました。
しかし、インターネットの普及により消費者が賢くなり、過度な広告に触れ続ける中で、従来の「恐怖を煽るスタイル」は徐々に敬遠されるようになりました。そこでアップデートされたのが、今回解説する「新PASONAの法則」です。
2026年現在、消費者が求めているのは「共感」と「誠実さ」です。売り手の一方的な主張ではなく、顧客の痛みを理解し、共に解決を目指すパートナーとしての姿勢。新PASONAの法則は、まさにこの現代の消費心理を掴むための最適解と言えます。本記事では、この法則を単なる知識としてではなく、明日から実務で使える実践的なスキルとして、5000文字を超える詳細な解説と共にお届けします。
2. 新PASONAの法則の全体像:旧法則との決定的な違い
新PASONAの法則は、以下の6つの要素の頭文字を取ったものです。
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Problem(問題)
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Affinity(親近感・共感)
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Solution(解決策)
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Offer(提案)
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Narrow down(絞り込み)
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Action(行動)
旧法則との最大の相違点は、2番目の「A」にあります。旧法則では「Agitation(煽り)」、つまり顧客が抱える問題がいかに深刻で恐ろしいかを強調し、危機感を募らせる手法が取られていました。しかし、新法則ではこれが「Affinity(親近感)」へと置き換わっています。
なぜ「煽り」から「親近感」へと変わったのでしょうか。それは、現代の消費者が「煽られること」に対して強い拒否反応を示すようになったからです。SNSの普及により、誰もが発信者となった現代では、誇大広告や不安を煽る手法はすぐに「不快なもの」として拡散され、ブランドイメージを毀損します。
新PASONAの法則は、顧客と同じ目線に立ち、「あなたの悩みはよく分かります。なぜなら、私たちも(あるいは他のお客様も)同じ経験をしてきたからです」という親近感を醸成することから始まります。これにより、顧客の警戒心を解き、その後に続く解決策を素直に受け入れてもらう土壌を作るのです。
3. 各要素の深掘り:心を動かす6つのステップ
それでは、各セクションで具体的に何を記述すべきか、コンサルティングの視点から詳しく見ていきましょう。
3-1. Problem(問題):顧客の痛みに寄り添う
最初のステップは、顧客が現在直面している「痛み」や「悩み」を言語化することです。 ここでは、単に「売上が上がらなくて困っていませんか?」といった抽象的な問いかけではなく、顧客が日常で感じている「具体的なシーン」を想起させることが重要です。
例えば、「夜、布団に入っても翌朝の資金繰りのことが頭を離れず、眠れない日々が続いていませんか?」といった、本人の感情や情動に触れる描写が求められます。自分の悩みが正確に言語化されているのを見たとき、読み手は「この人は私のことを分かってくれている」という安心感を抱きます。
3-2. Affinity(親近感):共感が信頼を醸成する
新法則の核となる部分です。ここでは、書き手と読み手の心理的な距離を一気に縮めます。 具体的には、過去の失敗談、自分自身の苦悩、あるいは既存の顧客がどのように悩んでいたかというエピソードを共有します。
「実は、私自身もかつては同じ悩みを抱え、何度も挫折しそうになりました」 「当社のクライアントの多くも、最初にお会いしたときは、あなたと全く同じ不安を口にされていました」
このように、相手を「孤独な悩みの当事者」から「理解者がいるコミュニティの一員」へと引き上げることが、後の提案をスムーズに受け入れてもらうための鍵となります。
3-3. Solution(解決策):ベネフィットを具体化する
共感を得た後は、いよいよ解決策の提示です。 ここで重要なのは、商品の「機能(スペック)」を説明するのではなく、その商品によって得られる「未来の姿(ベネフィット)」を語ることです。
「このコンサルティングプログラムを受ければ、毎月の新規顧客獲得数が2倍になります」という結果だけでなく、「その結果、あなたは資金繰りの悩みから解放され、週末には家族と心から笑って過ごせるようになります」といった、情緒的な変化までを描写します。また、なぜその解決策が有効なのかという「証拠(エビデンス)」や「独自の理論」を提示し、説得力を高めます。
3-4. Offer(提案):価値と価格のギャップを埋める
解決策に納得しても、最後には必ず「コスト」という壁が立ちはだかります。 Offerのセクションでは、価格を提示するだけでなく、その価格が「いかに投資対効果(ROI)が高いか」を論理的に説明します。
また、単体での提供ではなく、特典、ボーナス、アフターサポート、返金保証などを組み合わせることで、「この内容でこの価格なら、やらない理由がない」という状態(魅力的なオファー)を作り上げます。価格を「安売り」するのではなく、提供する「価値」を最大化して見せるのがプロの手法です。
3-5. Narrow down(絞り込み):決断の先延ばしを防ぐ
人間は本能的に「決断」を先延ばしにする生き物です。 「良いのは分かったけれど、また後で考えよう」という離脱を防ぐために、期限や人数、条件などの制約を設けます。
ただし、ここで嘘をついてはいけません。「2026年2月末までの期間限定」や「サポートの質を保つために限定10名様まで」といった、合理的で誠実な理由に基づく絞り込みを行います。これにより、読み手に「今、この瞬間に決断すべき正当な理由」を与えます。
3-6. Action(行動):迷いを断ち切る一歩を促す
最後は、具体的で迷いようのない行動指示(Call to Action)です。 「お申し込みはこちら」というボタン一つにしても、その後にどのような入力フォームがあり、完了後にどのようなメールが届くのかをあらかじめ明示しておくことで、顧客の不安を最小限に抑えます。
「まずは5分で終わる無料診断から始めてください」「この下の緑色のボタンをクリックして、メールアドレスを入力するだけです」といったように、中学生でも迷わないレベルまで具体化します。
4. 実践例(1):B2BコンサルティングサービスのLP構成案
具体的なイメージを掴むために、B2B向けの「組織改善コンサルティング」を例にした新PASONAの構成を見てみましょう。
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Problem: 優秀な若手社員ほど、3年以内に会社を去っていく。「最近の若手は何を考えているか分からない」と嘆く経営層と、閉塞感を感じる現場。社内の空気は重く、指示待ち人間ばかりが増えている。
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Affinity: 創業社長である私自身も、かつてはワンマン経営で、右腕と思っていた社員に一斉に退職された苦い経験があります。あの時の孤独と恐怖は、今でも忘れられません。
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Solution: 独自の「心理的安全性スコアリング」を用いた組織改善プログラム。単なる研修ではなく、3ヶ月で組織のコミュニケーション構造を根本から作り直します。
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Offer: 通常の顧問契約の半額で体験できる導入パッケージ。さらに、改善が見られなかった場合の全額返金保証と、管理職向けeラーニング教材を無償提供します。
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Narrow down: 私が直接並走するため、一ヶ月に受け入れられるのは新規3社のみです。今月は残り1社となりました。
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Action: 貴社の組織の「隠れたリスク」が分かる30分のオンライン無料診断に、今すぐこちらからお申し込みください。
5. 実践例(2):高単価B2Cオンラインスクールの集客レター
次に、個人向けの「資産運用・投資スクール」の例です。
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Problem: 物価は上がるのに給料は横ばい。老後2000万円問題と言われても、何から手をつければいいか分からない。新NISAを始めてみたものの、暴落が怖くて夜もチャートが気になってしまう。
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Affinity: 私もかつては「投資は怖い」と思い込み、銀行の預金残高だけを眺めていた会社員でした。専門用語だらけの解説書に挫折し、損をすることへの恐怖で一歩も踏み出せなかった時期があります。
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Solution: 難しい数式は一切不要。AIを活用した「全自動リスク管理ツール」と、マンツーマンのコーチング。自分に最適なポートフォリオを3時間で構築します。
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Offer: スクール費用は1年間の配当収入で元が取れる設計です。さらに、生涯使える「投資判断テンプレート」と、受講生限定のコミュニティ参加権をプレゼント。
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Narrow down: 2026年度の募集は、コーチの確保数に限りがあるため、今週末で締め切ります。
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Action: 自由な未来への第一歩を。無料の特別ウェブセミナーへの予約はこちらから。
6. 実践例(3):D2Cブランドの定期購入を促すステップメール
最後に、スキンケア商品のメールマガジンです。
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Problem: 鏡を見るたびに深くなる目元の悩み。高級な美容液を試しても、期待したほどの変化が感じられず「私の肌はもう手遅れかも」と諦めかけていませんか?
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Affinity: 開発担当の私も、同じ悩みに3年以上苦しみました。100種類以上の成分を試し、ようやくこの「〇〇成分」に出会ったとき、同じ悩みを持つ女性たちに早く届けたいと心から思いました。
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Solution: 浸透技術を極めた新開発の美容液。独自のデリバリーシステムが、角質層の奥深くまで潤いを届け、肌本来の力を引き出します。
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Offer: 定期便なら初回50%OFF。2回目以降もずっと20%OFFでお届けします。回数の縛りはありません。
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Narrow down: 原料の希少性から、一度の生産数には限りがあります。在庫がなくなり次第、予約販売に切り替わりますのでご注意ください。
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Action: 明日の朝、鏡を見るのが楽しみになる体験を。こちらのリンクからお得な定期コースを選択してください。
7. 2026年の消費心理:なぜ「煽り」はもう通用しないのか
ここで、なぜ2026年の現代において「Affinity(親近感)」が重要なのかを再考します。 現代社会は、AI生成によるコンテンツや、インフルエンサーによる過剰な演出で溢れかえっています。消費者は、何が真実で何がフェイクかを見極めるのに疲れ果てており、一種の「広告アレルギー」状態にあります。
このような環境下で、「今すぐ買わないと不幸になる」といった強迫的なメッセージは、瞬時に「売り手の身勝手な都合」として見透かされます。
逆に、弱さをさらけ出し、等身大の言葉で語りかける「親近感」のアプローチは、顧客の「心理的な安全」を確保します。人は「信頼できる人から買いたい」という根源的な欲求を持っています。新PASONAの法則は、文章を通じてその「信頼」をデザインする手法なのです。
8. 成果を最大化するためのライティング・テクニック
新PASONAの構成を活かすために、以下の3つのテクニックを意識してください。
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ベネフィットのベネフィットを語る 「売上が上がる(ベネフィット)」の先にある、「精神的な余裕が生まれる(ベネフィットのベネフィット)」まで言及することで、より深い情動を揺さぶります。
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具体的な数字と固有名詞 「多くの人が絶賛」ではなく「利用者の94.2%が30日以内に変化を実感」と書く。具体性は信頼感に直結します。
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読み手の反論を先回りする 「怪しい」「高い」「自分には無理だ」という読み手の脳内ツッコミを、SolutionやOfferの中で先回りして論理的に解消しておきます。これを「反対尋問の解消」と呼びます。
9. 結論:新PASONAは顧客と企業の信頼を繋ぐ架け橋である
新PASONAの法則は、単に商品を売るための「魔法の呪文」ではありません。 それは、顧客の悩みという深い谷に橋を架け、解決策という対岸へ、顧客の心に寄り添いながら導いていくための「コミュニケーションの地図」です。
ビジネスの目的は、顧客の生活をより良くすることです。新PASONAの法則を用いて誠実な文章を書くことは、まだあなたの商品の存在を知らずに悩んでいる顧客を救い出す行為に他なりません。
まずは、あなた自身の「親近感(Affinity)」、つまり顧客に対する純粋な思いや、過去の経験を棚卸しすることから始めてみてください。小手先のテクニックを超えた、あなたの心からの言葉が、新PASONAという型を通じたときに、何物にも代えがたい最強の販促ツールへと進化するはずです。